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【クトゥルフ神話TRPG 】正気度の運用

SANと正気度
SANとはSanityの略で、正気や健全性を意味する英語である。lose one's sanityで、気が狂うと言った表現になるらしい。クトゥルフ神話TRPG では正気度と訳されている。ゲームでは正気度が0になると、完全な心神喪失状態を意味する。

ゲーム中では、SANと現在正気度は区別される。SANは、POW×5で表現されるステータスで、現在正気度の初期値となるが、ゲーム中に現在正気度は変化しても基本的にSANの方は固定され変動しない。

現在正気度とは別個に存在するSANとは何を表現する為のステータスなのか。SANの元となるPOWは精神力や集中力の強さを表現する数値である。なので、メンタルに関連するステータスである事は明白だ。

現在正気度の方は、恐ろしい体験をする毎に減少していく。耐久力(HP)と似たシステムである。耐久力が、身体の健康状態を表現しているなら、現在正気度は心の健康状態(メンタルヘルス)を表現している。耐久力の初期値はキャラクターによって異なる。小柄で不健康であれば低く、大柄で鍛えていれば高い。なので、耐久力の現在値は健康状態を意味してはいない。同じHP10でもまるで健康だったり、ズタボロだったりするのである。正気度も同じで、正気度40でも人によって平常運転だったり、極度に不安定な状態だったりするのである。耐久力や正気度の現状は基本的に初期値との相対値で決定される。

耐久力と正気度で1つ違いがあるとするなら、上限である。耐久力は基本的に初期値を超えて上昇することは無い。一方で、正気度は初期値を超えて上昇する事がある。人を助けたり、恐怖に打ち勝ったり、スキルが入神の域に達するといったイベントで、探索者は自信を付けてメンタルヘルスが向上する。メンタルヘルスの減少が、マイナスの性格変化だとするなら、メンタルヘルスの上昇はプラスの性格変化である。正気度が初期値の2倍にまで成長したとすると、それは良くも悪くも元の人格とはかけ離れた性格になっている事を意味する。と、なると元の人格の比較という意味で、SANは1つの基準点として必要になるのである。

正気度と恐怖
クトゥルフ神話TRPGでは、恐ろしい場面に遭遇すると、正気度ロールを行い、失敗すると正気度を減少させるという形で、探索者の恐怖を表現する。

これは具体的には、恐怖によってどれだけ心に傷を負ったかという形での表現であり、恐ろしさ=正気度喪失では無いという点には注意が必要である。

ルールブックをよく読めば、正気度判定が必要なケースの例として社会的地位の喪失や、失恋まで含まれている事に気付ける。これらは、別に恐怖感は無いが、心に傷を負わせるイベントである。正気度喪失の例を示したリストも、神経を損なう恐怖の例と書かれている。神経を損なう=メンタルヘルスに害を与えるという意味である。つまり、メンタルヘルスに影響しない恐怖…というのも存在する事を覚えておこう。つまり正気度ロールを行って、正気度が減少しなければ恐ろしく無かったのでは無く、恐ろしかったがメンタルヘルスは悪化しなかったという事態を意味するのである。

また、正気度の減少は、どれだけ恐ろしいかでは無く、どれだけ心が傷ついたか…トラウマを負ったっか、メンタルヘルスが悪化したか、という表現である事を理解すると、神話的生物や魔道書などの存在も理解しやすくなる。

魔道書は読んだだけで気が狂うほど恐ろしい書物というよりは、人を不安にさせ、嫌悪感を与え、人格に影響を及ぼす様な内容が書かれた、メンタルヘルスに良くない書物だと理解できる。読んだだけで気が滅入る様な本は、魔道書で無くても心当たりはあるはずだ。よく言われるトラウマを与える絵本なんかも、正気度を1くらいは低下させているかもしれない。

同様に神話生物に関しても、死ぬほど見た目が恐ろしい存在というよりは、シンプルに強烈なストレスや、精神ダメージを与える存在と捉えたほうが理解しやすい。もしくは、見ていて苛つく様な理解し難い存在の100倍、1000倍、意味不明な存在である。自分の常識で理解しがたい存在は、直接的な恐怖は与えなくても、精神を不安定にさせる物である。恐ろしすぎて死ぬのは実感し難くても、不安になりすぎて死ぬとか、苛つきすぎて死ぬのは案外イメージしやすい。

正気度とストレス
メンタルヘルスを悪化させる=正気度を下げると捉えると、より柔軟な正気度の運用が可能になる。例えばブラック企業での過酷な長時間労働でも正気度(メンタルヘルス)は低下するし、死体を切り取るなどの胸糞悪い作業でも正気度は低下するはずである。家族に危険が迫るという情報や、自分の命のタイムリミットが迫っているという状況も、強烈なストレスになり、正気度を低下させるだろう。基本的にこうしたストレスは状況に伴うものなので、回避は出来ない。耐えれるか、耐えれないかだけだ。

身体的なダメージは、まず命中判定を行ってから、やる場合は回避判定を行い、ダメージの算出に入る。正気度ダメージの場合は、必中なので命中判定を行わず、ダメージに耐えれるかどうかの現在のストレス耐性としての正気度判定を行い、耐えられなかった場合はダメージ算出に入る。偶に探索者が見ていなかったので正気度判定を回避出来るかという話があるが、状況に伴うストレスは基本的に回避不能と考えるべきだろう。

ストレスとホラー
基本的にクトゥルフ神話TRPGはホラーなので、探索者のメンタルヘルスはどんどん悪化させた方が良い。むしろ主人公が終始健全であれば、ホラーとして成立しないのである。ホラー映画でも、ホラー小説でも、たいてい主人公はどんどん不安になり追いつめられていくし、場合によっては最初からかなり超自然現象とは別件で精神を病んでいるケースも多い。むしろ、病んでいるから心霊現象に遭遇するという逆説すら成立する。

恐怖を与えるイベントを沢山用意しようとすると、下手なお化け屋敷と化してしまう可能性の方が高い。死体や幽霊は、やたら滅多と登場させるものでは無いのだ。恐怖を与えるイベントというよりも、メンタルヘルスをすり減らすイベントを意識してみるのが重要だ。基本的に悪い時には、悪いことが重なるものという認識があるように、ストレスは沢山用意すればするほどホラーとしては良い雰囲気作りにも繋がるのである。
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by cemeteryprime | 2015-12-02 18:11 | TRPG講座・考察 | Comments(0)

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