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【映画感想】ワンダーウーマン

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例の如く、死ぬほどネタバレ。

あらすじ

主人公のダイアナはギリシャ神話の時代から続いて来た女だけのアマゾン族が暮らす島の王女だ。島には、古代ギリシャの神々を滅ぼし共倒れになった戦争の神アレスがいつか復活した際は、平和の使者であるアマゾン族が倒すという伝承があり、ダイアナはそれを信じていた。


時代は第一次大戦の最中、ドイツ兵に追われたアメリカ人スパイのスティーブが島に漂着する。追撃して来たドイツ兵との戦闘でアマゾン族が数名死亡。ドイツ軍が開発した新型の大量破壊兵器の話を聞いたダイアナは戦争の神アレスの復活を確信する。アマゾン族の役目を全うする為ダイアナは、アレスを倒して戦争を終結させるべくスティーブと共に島を出るが…。


感想

かなりフェミニズム的な文脈でも宣伝されたり議論されていた映画なので、そういう映画なのかなと思って観に行ったのだが、案外そうでもなかった。確かにワンダーウーマンというキャラ自体は、そういうフェミニズム的な文脈で生まれたキャラでなんだが、この作品に関してはこれまで過去にあった戦う女性の映画と比べて特筆すべき何かがあったかというと特にはなかったと言わざるを得ない。女性が主役のスーパーヒーロー映画というだけだ。


ストーリーに関して

自然豊かで女性しかいない社会で育った戦う女戦士のダイアナが、スモッグまみれで女性の社会的地位が低い当時のロンドンにやって来る下りは、所謂ターザンが都会へ来るみたいな話でそれなりに面白かった。ただ、それ以降の展開はあまり主人公が女性である意味がないような気もした。


監督もインタビューで『第一次世界大戦当時の女性差別のシーンはあれど、主人公の性がどうこうというのが主題の作品ではありません』と話している。ワンダーウーマンというキャラ自体はフェミニズムの文脈で作られたキャラであり、フェミニズム要素への過度な期待や論争へ配慮したのかもしれないが、それにしたってあまりにも主人公が女性である点に意味がないのはいかがなものか。映画公開に向けてのマーケティングなどでもそういった論争が起こったりしていて期待していただけに、割と肩透かしを食らった形だ。


マル博士に関して

この作品にはドイツ軍で新型毒ガス兵器を開発している悪の科学者としてマル博士という女性のヴィランが出て来るのだが、このキャラの扱いが勿体なかった。

マル博士も、女性なのに前線で戦っている軍人であり、戦局を左右する最終兵器を作っていた、言ってみればスーパーウーマンである。本来なら正義のスーパーウーマンの対極としての悪のスーパーウーマンであったのだが、前述の様にこの映画の場合は主人公が女性である意味が薄いので、単なる悪に仕えるマッドサイエンティスト以上でも以下でも無い扱いをされていた。


例えば、ガスマスクを付けた性別不明のキャラにしておいて、クライマックスでマスクが外れて女性であったことが発覚して、まさか女性がこんな残虐な兵器を開発していたのかとダイアナが驚くみたいなシーンを入れていても良かったんじゃないのかとか。他にも、スティーブとのパーティー会場での接触シーンで、マル博士の正体を知らないスティーブが、美人の女性なので秘書かなんかだろうと見くびって、色仕掛けでマル博士の情報を引き出そうとして失敗するシーンなんかがあっても良かった。


アレスに関して

この映画のもう一つの良く無い点はアレスだ。軍神アレスが、蛮族系というよりは、こじらせた文系みたいなキャラだったのは意外性があって面白かったが、この映画の場合、アレスは登場させない方が良かったのでは無かろうか。


監督はインタビューで『本作は典型的な正義のヒーローが戦争という善悪がグレーな場所で正義をどうやって貫くのかを問われるのが大きな要素』と語っている。実際途中まではテーマに沿った形で素晴らしい。


戦争の原因は軍神アレスで、アレスさえ倒せば操られていた人間たちは目が覚めて平和が訪れるという夢物語を信じたダイアナが戦地に突撃していく話になっていて、スティーブからそうじゃないんだよという話をされつつも聞き入れない。スティーブは、戦争は誰か一人の悪者が起こすんじゃなくて、みんなの責任で起こるという良い話もする。最後にダイアナは、邪悪な大量殺戮を企むドイツ軍の将校をぶち殺すのだが、それでも戦争は止まらず、愕然とする。


そこまでは良いのだが、なんとその後に結局アレスが登場してしまう。結局アレスは戦争を劇化させる為に人間を操っていたのである。そしてダイアナとアレスが対決する。このそれまでのテーマをぶち壊す展開は、馬鹿じゃねーのかなと思う。確かに、ヒーロー映画だし最後は超人同士の対決で締めようというのが分からなくもないが、これだと戦争は一人の悪人が引き起こしているんじゃないという、それまでの戦争と正義というテーマが台無しだ。一応、それでも悪いのは人間だとアレスは言い訳がましく説明はするのだが、だから何だよという感じである。


アレスはキャラ造形的にも色々微妙で、人間の危険性に気付いていたが故に神に造反したルシファー的な扱いになっている。エンターテイメント性を考えるなら、悪人はとことん悪い奴にすべきだったと思う。戦争を引き起こすことで、戦争の神であるアレスは勝利を祈る人間からの信仰で力が増すとかそういうストレートなクズにしとけば良かった。


もしくはアレスを単に人間の本質を露見させたい文系キャラにしておきたいなら、舞台が第一次大戦なので、アレスの関与はあくまで戦争のトリガーになったサラエボ事件に関与したとかで、確かに戦争の切っ掛けは作ったがここまで酷い戦争に発展したのは人間自身の性による自業自得とかそういうスタンスで行けば良かったのにと思う。

クライマックスに関して

ダイアナが女性ヒーローであるという点を活かすなら、例えば「これが漢の死に様じゃい!」みたいな感じで、毒ガスを積んだ爆撃機もろともヒロイックに自爆しようとするスティーヴを止めて、仲間たちと一緒になんとか他の解決方法を見つけるだとか、同じ女性であるマル博士をなんとか説得して無効化する方法を聞き出すとか、そういう男のヒーローじゃないからこそな、決着の付け方があっても良かったんじゃないのかなと思う。


そして、最後は生き残った仲間たちと酒場で打ち上げをする訳だ。何なら、本当はさっさと戦争を止めたかったドイツ兵なんかも一緒に。音楽はもちろんスコットランド人の狙撃手が担当する。


DC映画は暗いムードで失敗してきたので、ここらでこういうハッピーエンドをぶち込んでも良かったのでは無かろうか。


色々不満は述べたが、それもこれもこの映画はもっともっと面白くなれたはずなのに惜しいなという想いからだ。正直最高傑作だとは思わないが、面白い映画だし、数少ない女性が主人公のアメコミヒーロー映画なので、是非観に行ってほしい。


by cemeteryprime | 2017-08-26 13:23 | 作品・感想 | Comments(0)

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