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【映画感想】シェイプ・オブ・ウォーター

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結論

人の本質を描いた傑作。直ぐに観に行くべき。

あらすじ/概要

舞台は1960年代アメリカ。主人公のイライザは、声帯に障害を持ち喋れない中年独身女性。政府研究施設で清掃員の夜勤をしている。

ある日、南米から半魚人が捕獲されて来て、イライザは半魚人とこっそり意思疎通をするうちに、恋に落ちる。しかし、無情にも研究所に半魚人を解剖しろという通達が下りる。

あらすじとしては、現代版(といっても舞台は60年代だが)の人魚姫である。ただし、主人公は声を失った女性で、相手が半魚人の男性という感じで色々逆転している。半魚人はアマゾンで神と崇められていた存在であるのに対して、主人公ははっきりいって社会の底辺で働く女性である。そんな感じに色々逆転しているので、ラストも当然…。

面白さ

ただ、この作品の面白さは捻りを加えたリトルマーメイドである点には無い。

この作品の真の面白さは、人の本質について、これ以上ないくらいに掘り下げ、尚且つ芸術的に描いている部分だ。実は、この映画で語られる人の本質は、このブログで過去に紹介した『官僚制のユートピア』だとか『負債論』の内容と共通する点が多い。どうしてそういう事が起こるかというと、文化人類学も文学(映画)も人の本質について探求するという点で同じジャンルだからだ。

学者が何百ページにも渡る文章で数冊の本の形で説明する内容を、デルトロは2時間程度の美しい芸術作品として形にしているのである。これぞ天才の所業だろう。

権力と愛

この映画で特にハッとさせられる指摘がある。それは、権力への執着と、道具への執着が、どちらもディスコミュニケーションへの欲望に繋がっているという点である。

誰にでも心当たりのある話だが、相手といちいち話し合う事は面倒くさいのだ。権力(上下関係)は命令によってそういう手間を省略できるし、便利な道具も本来なら二人でやらないといけなかった仕事を一人でやれる様にする事で実はコミュニケーションの手間を省いているとも言える。

本作の悪役ストリックランドは、政府機関に勤める権力を求める冷酷な官僚として描かれる。権力への欲望、車への愛着、嫁がいるが喋るのは嫌いでセックスの時も声を出すんじゃねぇーと口を塞ぐ。そして、主人公が喋れない点に目をつけて肉体関係を迫ったりもする。徹底的にディスコミュニケーションを求める男なのだ。

一方、彼と対決するのは、そうした権力によって分断され孤独を強いられた人たちだ。主人公は障害者だし、その親友で同僚は黒人。働く場所が無いので、政府施設で夜勤の清掃員というキツい仕事をしているのだ。主人公の隣人は、ゲイの画家。みんな、社会の正しさからはみ出した人達である。そして主人公と恋に落ちる半魚人は、アマゾンから拉致されてきており、彼もまた、権力によって孤立させられた被害者である。黒人もアフリカから拉致されてきたという点では同じだ。好き好んでマイノリティーになった訳じゃない。同性愛者だって、時代と場所が違えば特に珍しい事でもなかった。

そして、もう一人も協力者はネタバレになるが、なんと研究所で務める科学者で彼はなんとロシアのスパイだ。彼はマイノリティーでは無いが、彼もまた権力の被害者であり、好き好んでスパイとして秘密を抱えて孤独な生活をしている訳では無い。西側の科学に触れる為にスパイにならざるを得なかったのだ。

彼らは、半魚人の救出という目的の為に、助け合いチームになる。そこに描かれるのは、孤独さ故に愛を求め、助け合う人の姿だ。主人公の半魚人への愛は理解できなくても、あなたの事が大切だから助けてあげる。ディスコミュニケーションへの欲求とは真逆の欲求として、愛が描かれるのである。

ストリックランドの悲劇

主人公と半魚人の間の愛も本作の見どころになっているが、個人的にはストリックランドのキャラクターも魅力的である。ストリックランドは恐ろしい悪役として描かれるが、同時に現代社会の論理に従って生きる悲劇の怪物でもあるのだ。

官僚的な社会で、真の男になる為に努力を続けて来たストリックランド。努力とは、すなわち組織への貢献であり、利益の追求である。しかし、半魚人を逃がすという失態をしてしまう。揉み消そうとするストリックランドだが、上司に連絡されてしまっていた。高度な官僚的社会において、失敗とは失墜と同義なのだ。

まともな男になる為に、ずっと努力してきたのに、たった1回のミスで…俺は一体いつまで努力を続ければいいんだ!と悲痛な叫びをあげるストリックランドに上司は無常に告げる。ミスをするやつは、まともな男では無いと。

ストリックランドの悲劇は、現代社会に生きる人々にとって他人事では無い。ミスが許されない社会なのだ。それ故に、ミスは隠蔽される。そして隠蔽しきれないミスが発生した時、ストリックランドの様に誰かがまともな男では無かったと、切り捨てられるのだ。

ちなみに、ストリックランドはそこから更なる怪物へと変貌するが、その演出がまた恐ろしくもあり、高度にシンボリックな表現なので是非見て欲しい。

ストリックランドは、そのシンボリックな演出によって、官僚制に翻弄される男から、官僚的な組織そのものを体現する存在へと変貌するのである。

人を描くことによる普遍性

この映画を観ていると、そこに現代社会の相似形が見える。研究所のスパイは最近話題のスリーパーセルそのものだし、ストリックランドの話は財務省の佐川長官の話でもある。映画と現実が大きく違っているのは、権力によって分断された人々が、この映画の様に愛には目覚めず、お互いに罵り合っているという点だ。

別にデルトロは、この映画に日本社会の現状を盛り込んではいないが、社会問題というのが根源的には人の性質的なものから来ている以上、人を描くと社会問題を彷彿とさせる要素も映り込むのだ。

シェイプ・オブ・ウォーターは、変わった恋愛映画では無い。人についての、愛についての映画である。そして、愛は現代社会で様々な問題を引き起こしている、ディスコミュニケーションへの欲望に対抗しうる唯一の要素なのだ。それが理解できたなら、さっさと劇場でこの映画を観る以外の選択肢は無いはずだ。さっさと観に行くべし!!


by cemeteryprime | 2018-03-03 01:06 | 作品・感想 | Comments(0)

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