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【映画感想】アナと雪の女王 2回目

TVで『アナと雪の女王』をやっていたので、久々に観てみた。傑作だと思ったが、劇場で観た時の感想記事(4年前)を読むと割とディスっていた。

4年も経つと、作品の見え方もかなり違って来るもんである。なので、改めて感想記事を書いてみよう。

あらすじ(完全ネタバレ)

アレンデールの第一王女エルサは、他の人には無い特別な力を持っていた。しかし、その力で妹のアナと一緒に遊んでいた時に、ふとしたはずみでアナを傷つけてしまう。その事がトラウマになったエルサは、両親やアナと距離をおくようになり、同時に力のコントロールも失っていく。そんな中、両親が早くに事故で亡くなり、エルサが成人するまでアレンデールは鎖国する事になる。

エルサは己の能力に怯え、それを抑圧し、二度とアナを傷つけまいと部屋に籠り続けた。アナは、両親を早くに失い、唯一の肉親であるエルサに距離を取られた事で、異常に人懐っこい性格へと成長する。

そして、エルサの女王就任式の日。アレンデールの鎖国は解除され、貿易相手の国など様々な外国人もやって来る。就任式は無事に済んだモノの、長年の孤独のせいで人懐っこいアナは、外国からやってきたハンス王子に一目惚れし、結婚すると言い出す。それが原因でエルサはアナと喧嘩し、能力が暴走し、危険な魔法使いだと国民にバレてしまう。

やけくそになり、家族も国も捨てたエルサは、一人で山に籠るのだが、一人になった事で自由になり、抑圧からも解放される。しかし、解放された魔法はアレンデールに厳しい冬をもたらし、港を凍らせ、再び国を閉ざしてしまう。

アナは、エルサを探して魔法を解除してもらおうとし、その途中で、森でトナカイやトロールたちと暮らす変人のクリストフに出会う。二人でエルサの所に行くが、制御不能なエルサの魔法はアナの心を凍らせてしまう。心が凍てついたアナは、ゆっくりと凍っていく。アナを救うのは真実の愛だと知ったクリストフは、アナの婚約者のハンスの所へ向かう。

しかし、ハンスはアナを愛してはいなかった。ハンスは母国で継承順位の低い王子であり、アレンデールの王位を狙っていただけだった。アナは、長年愛に飢えていた為に、愛がどういうものなのか理解していなかったのだ。ハンスのそれは真実の愛ではないと悟ったアナは、それでは損得勘定抜きで自分を助けてくれたクリストフこそ真実の愛をもたらす人物では無いかと考える。

凍り付いて死にかけながらも、クリストフの下に向かうアナだったが、途中でエルサがハンスに殺されかけている場面を目撃し、自分の命も顧みず、エルサを助けようとする。その結果、クリストフは間に合わず、アナは完全に氷と化してしまう。しかし、エルサがアナを想い泣いていると、アナの心は融解し、元に戻る。真実の愛とは、男女の恋愛などではなく、家族がお互いを思いやる様な深い愛情の事だったと判明する。

相手を傷つけるかもしれないと恐れ、相手を遠ざける心は、それでも相手を思いやる深い愛情には及ばないのだ。それに気付いたエルサは、魔法をコントロールする術を理解する。アレンデールから冬は消え去り、エルサは魔法で国民を楽しませる事が出来る様になる。

レリゴー~レリゴー~

エルサが長年の抑圧から解放され、自分らしさを全開にし、そして他人の迷惑なんて知った事かな精神で歌い上げるレリゴーは、開放感の塊の様なエモい場面なので、そこばかりが注目されがちな訳だが、作中では実はネガティブな行為として描かれている。エルサの選択は、家族も国も捨て、自分勝手に生きるというもので、その結果として国は冬に包まれ、再び鎖国状態になっているからだ。解放を肯定的に描くどころか、個人主義が蔓延する事によるネガティブな側面を明確に描いているのである。

ついでに作中で描かれるエルサを殺害すれば、冬も終わるだろうという悪人たちの目論見は、いうなればトランプを暗殺すればアメリカ・ファーストな排他的政策が終わるだろうみたいなものなのである。事件が、アナが考えなしにハンス王子という外国人を招き入れようとした結果だという点も注目すべきだろう。

アナ

アナは愛が良く分からないキャラだという事は、地味に作中で何度も台詞で説明されていたりする。最初はエルサが指摘し、終盤のハンスとクリストフで2回も真実の愛を誤認する場面でも、直前にオラフがわざわざ台詞で指摘している。

分からない理由は、両親を早くに亡くし、大好きだった唯一の肉親である姉のエルサにも、理由も分からず距離を取られていたからだ。明るく天真爛漫なヒロインに見えるが、実は愛に飢えつつも、愛が分からない、ちょっと悲しいキャラなのである。

クリストフ

クリストフは面白いキャラで、トナカイやトロールといった人間以外の友達は多いが、人間の友達はいないという変人である。クリストフが変人であるという点は、作中でも『家族の思い出』においても、何度も強調される。

キャラとしては、好意を寄せてくれるし、悪い人じゃないけど、恋愛対象にはなれずどうしても良い人止まりな感じのオタクキャラの変形だという気はする。ただ、今作では、アナとの恋愛も微妙に進展はする。

氷の美しさを理解する男だし、アナとエルサの関係性を邪魔しないタイプの使い勝手の良い男だから、そういうポジションに収まれたという感はどうしても否めないが。

エルサ

エルサの氷は、物語のラストで示される様に、キラキラと幻想的で楽しいものでもある。が、同時に危険なものでもある。

エルサの氷の魔法は、色んなモノのメタファーだと捉えられるが、改めて観て思ったのは、やはり“想像力”のメタファーとしての要素が一番大きいのでは無いかという点である。ラストで肯定的に描かれる人々を楽しませるキラキラと幻想的で楽しいものという氷の魔法の在り方は、まさしく『アナと雪の女王』という作品そのものである。

氷の魔法=想像力であると理解すれば、思いやりの心が欠落した、無軌道な想像力は危険であるというメッセージも飲み込み易くなる。

アナ雪の公開当初はジェンダー論的な言説と絡めて語る事が流行っていた様な気がするが、改めて観ると、それらは作品を矮小化する視点だった様に感じる。

総括

4年前は全くその辺を汲み取れなかった訳だが、この作品は紛れもなく傑作だろう。レリゴーも素晴らしい曲だが、感想文を読めば真に素晴らしいのはそんな所じゃない事は理解してもらえるだろう。今年、『アナと雪の女王2』も公開されるらしいので、素直に楽しみである。


by cemeteryprime | 2019-01-04 00:38 | 作品・感想 | Comments(0)

【雑記】ネトフリで観た作品一覧(2018年)…随時更新

今年はまだ終わっていないが、取りあえず現時点でのネットフリックスで2018年に観た作品を振り返る。ついでに覚えている範囲で点数も付ける。中途半端に数話だけ観た作品とかは省略。

評価基準はこんな感じ

★★★★★…傑作

★★★★…凄い良かった

★★★…普通に面白かった

★★…微妙

★…ゴミ

ドラマ

『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』★★★★(全10話)

『ベター・コール・ソウル』★★★★★(シーズン4、全40話~)

『オザークへようこそ』★★★★(シーズン2、全20話~)

THE GOOD COP/グッド・コップ』★★★(全10話)

『アメリカを荒す者たち』★★★★(シーズン2、全16話)

『ザ・シューター』★★(シーズン3、全31話)

『アメリカン・ホラー・ストーリー:体験談』★★★★★(全10話)

Misfits/ミスフィッツ-俺達エスパー!』★★★(シーズン5、全37話)

『グッドガールズ:崖っぷちの女たち』★★★(全10話)

『ベイツ・モーテル』★★★(シーズン3、全30話~

GRIMM/グリム』★★★★(シーズン5、全110話~)

FARGO/ファーゴ:シーズン3』★★★★★(全10話)

『13の理由』★★★★★(シーズン2、全26話)

SUITS/スーツ』★★★★(シーズン6、全93話)

『サンタクラリータ・ダイエット』★★★(シーズン2、全20話)

『フランケンシュタイン・クロニクル』★★★★(シーズン2、全12話)

『オルタード・カーボン』★★★★(全10話)

『私立探偵ダーク・ジェントリー』★★★★(シーズン2、全18話)

『ブラックライトニング』★★★★(シーズン2、継続中)

LUCIFER/ルシファー』★★★★(シーズン3、全57話)

THE FLASH/フラッシュ』★★★(シーズン3、全69話~)

ARROW/アロー』★★★(シーズン5、全115話~)

Marvelデアデビル』★★★★(シーズン3、全39話)

Marvelアイアン・フィスト』★★★★(シーズン2、全23話)

Marvelルーク・ケイジ』★★★★(シーズン2、全26話)

Marvelジェシカ・ジョーンズ』★★★★(シーズン2、全26話)

iゾンビ』★★★★(シーズン3、全45話~)

『アウトキャスト』★★★(シーズン2、全20話~)

Happy!』★★★★(全8話)

GOTHAM/ゴッサム』★★★★(シーズン3、全66話~)

『レギオン:Legion』★★★★(全8話~)

ドキュメンタリー番組/映画

『アグリー・デリシャス』★★★★★(全8話)

『ファイナル・テーブル』★★★★(全10話)

『刑務所サバイバル術』★★★

13の理由:現代が抱える社会の闇を考える』★★★★★(シーズン2、全2回)

『最速の称号』★★★★(全8回)

『イカロス』★★★★

映画

『ブラックミラー:バンダースナッチ』★★★★

『哭声/コクソン』★★★★

『セル』★★★

『ジェーン・ドゥの解剖』★★

『アナイアレイション-絶滅領域-』★★★★

『ザ・リチュアル いけにえの儀式』★★★

『ヴィジット』★★★★

『ヘルボーイ:ゴールデンアーミー』★★★★

『パンズ・ラビリンス』★★★★★

『ファミリー・シークレット』★★★

『ダーティハリー』★★★

『モーグリ:ジャングルの伝説』★★★

『ニツ星の料理人』★★★

『トレマーズ』★★★★

『遊星からの物体X』★★★

『ブラッド・ファーザー』★★★

『バッド・バディ!私とカレの暗殺デート』★★★

『ギャングスターズ 明日へのタッチダウン』★★★

『パニッシャー(2004)』★★

『マイアミ・バイス』★★★

『マンマ・ミーア!』★★★

『砂の城』★★★

『ハート・ロッカー』★★★

『スパイ・レジェンド』★★★

『クリスマス・クロニクル』★★★★

『ジーサンズ はじめての強盗』★★★

『エクスティンクション 地球奪還』★★★

『ナショナル・セキュリティ』★★★

『エルフ』★★

『ゴーストバスターズ(2016)』★★

『マッハ!参』★★★

『ファイナル・ガール』★★★★

Mr.ホームズ 名探偵最後の事件』★★★

『スポットライト 世紀のスクープ』★★★★★

『アウトサイダー』★★★★

『コナン・ザ・バーバリアン』★★

『キング・オブ・エジプト』★★

『マッキー』★★★★

『探偵ミタライの事件簿 星籠の海』★★

『エンド・オブ・キングダム』★★★

『カイジ 動物世界』★★★

『サイコキネシス-念力-』★★★★

『人狼』★★★★

『超能力者』★★★★

『新宿インシデント』★★★★★

『男たちの挽歌』★★★★

『墨攻』★★

『裸足のクンフー・ファイター』★★★★★

『イップ・マン 継承』★★★★

『少林寺木人拳』★★★

『クレイジーモンキー/笑拳』★★★

『道士下山』★★★

『少林拳対武当拳』★★★★

『酔拳立志伝』★★★

『新・少林寺三十六房』★★★

『続・少林寺三十六房』★★★

『少林寺三十六房』★★★

『続・空飛ぶギロチン』★★★★

『空飛ぶギロチン』★★★★

『五毒拳』★★★★★

『断罪のカンフーマスター』★★★★★

『レスリー・チャンの神鳥英雄伝』★★

『成龍拳』★★★★

『カンニング・モンキー/天中拳』★★★

『蛇鶴八拳』★★★

TAICHI/太極 ゼロ』★★

『シャドー・オブ・ナイト』★★★★

『ヘッドショット』★★★

『ドライブサーガ/仮面ライダーチェイサー』★★★

『破壊兼ポリマー』★

『キカイダー Reboot』★

『クレヨンしんちゃん嵐を呼ぶモーレツ!大人帝国の逆襲』★★★★

『クレヨンしんちゃん嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ』★★★★

『ネクスト ロボ』★★★

『レゴ(R)ニンジャゴー・ザ・ムービー』★★★★

LEGOムービー』★★★★

『生きのびるために』★★★★

『ガーディアンズ 伝説の勇者たち』★★★

アニメ

『ジョジョの奇妙な冒険:ダイヤモンドは砕けない』★★★★(全39話)

『バキ』★★★(シーズン2、継続中)

『ジョジョの奇妙な冒険:黄金の風』★★★(継続中)

SSSS.GRIDMAN』★★★★★(全12話)

『ヴォルトロン』★★★★(シーズン8、全76話)

『ティーン・タイタンズGO!』★★★★(シーズン4、全104話)

『トロールハンターズ:アルカディア物語』★★★★★(シーズン3、全52話)

『ミッシング・スリー:アルカディア物語』★★★★(シーズン1、全13話~)


by cemeteryprime | 2018-12-28 17:03 | 時事ネタ | Comments(0)

【雑記】映画館で観た作品一覧(2018年)

今年はまだ終わっていないが、取りあえず現時点での2018年に観た映画を振り返る。ついでに覚えている範囲で点数も付ける。

評価基準はこんな感じ

★★★★★…傑作

★★★★…凄い良かった

★★★…普通に面白かった

★★+…基本的に微妙だが光るモノもある

★★…微妙

★…ゴミ

1

『キングスマン:ゴールデン・サークル』★★★

『ジオストーム』★★

『ダークタワー』★★★

『劇場版マジンガーZ:インフィニティ』★★

『ザ・リング/リバース』★★+

2

『グレイテスト・ショーマン』★★★★★

『空海-KU-KAI-/美しき王妃の謎』★

『スリー・ビルボード』★★★★★

『羊の木』★★★

『不能犯』★★

『マンハント』★★★

3

『シェイプ・オブ・ウォーター』★★★★★

『ブラックパンサー』★★★★

『ボス・ベイビー』★★★★

『アナと雪の女王/家族の思い出』★★★★

『リメンバー・ミー』★★★★★

4

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』★★★★

『レディ・プレイヤー1』★★★

『パシフィック・リム:アップライジング』★★★★

『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』★★★★

5

『ランペイジ 巨獣大乱闘』★★★★

6

『ワンダー 君は太陽』★★★★

『万引き家族』★★★

『デッドプール2』★★★★

7

『ジュラシック・ワールド/炎の王国』★★

『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』★★★

8

『オーシャンズ8』★★★

『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』★★★

『インクレディブル・ファミリー』★★★★

『アントマン&ワスプ』★★★

9

『ザ・プレデター』★★★★

10

『イコライザー2』★★★★

11

『ボヘミアン・ラプソディ』★★★★

『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』★★★

12

『来る』★★★★

『ヴェノム』★★

『アリー スター誕生』★★★★


by cemeteryprime | 2018-12-16 17:34 | 時事ネタ | Comments(0)

【映画感想】カンフー映画、色々

最近、ネトフリに古いカンフー映画が幾つか追加されていたので、特に面白かった作品を幾つか紹介する。

断罪のカンフーマスター/Opiumu andthe Kung Fu Master(1984)

傑作。阿片と暴力で街を蝕む悪党に、街の武術師範が立ち向かおうとするが、師範もまた阿片に蝕まれていた…という話。カンフー映画として、アクションもストーリーも面白いのだが、それに加えて阿片が街を蝕み、人を駄目にする描写がかなり丹念に描かれていて秀逸。

五毒拳(1978)

傑作。五毒拳の最後の6番弟子が師匠の遺言で、名前を変え正体不明となった5人の兄弟子を追跡し、悪人であれば始末しろと命じられる。しかし、5人の兄弟子はそれぞれムカデ拳、ヘビ拳、サソリ拳、ガマ拳、ヤモリ拳の達人で、互いに能力は拮抗しており、5つの拳法を広く浅く学んだ6番弟子は単独では兄弟子には勝てないので、兄弟子の人格を見極め、協力者を得なければ任務は達成できない…更に兄弟子たちは互いに五毒拳の秘宝を狙っていた…という、ミステリー要素とバトルロワイアル要素が特徴。

アクションもストーリーも最高なのだが、とにかくムカデ拳、ヘビ拳、サソリ拳、ガマ拳、ヤモリ拳の5人の兄弟子たちのキャラクターが秀逸で、獣拳戦隊ゲキレンジャーにはデザインも含めて丸パクリしたキャラが出て来る。

空飛ぶギロチン(1975)

なかなか面白い。内部粛清を行う皇帝直属の暗殺部隊の隊員マー・トンは、国を思う義士を暗殺するという汚れ仕事の連続に嫌気が差していたが、ついに自分まで暗殺の標的となる…。という所謂、抜け忍モノ。

ちなみに主人公を追う暗殺部隊の上官役の人は、『捜査官X(2011)』という映画において、抜け忍である主人公を追う暗殺教団の首領として登場する。

続・空飛ぶギロチン(1978

なかなか面白い。そらとぶギロチンの続編。前作は、シンプルに脱走兵となったマー・トンを最強の暗殺部隊が追うという話だったが、今作は最強の暗殺部隊を使役する邪悪な皇帝に立ち向かう江湖の義士たちに、一撃必殺の暗殺兵器である空飛ぶギロチンのスペシャリストなマー・トンが協力するという話。

秘技・十八武芸拳法(1982)

カンフー映画が好きなら観て損は無い作品。義和団を構成するカルト教団同士の内紛を描いた話。基本的にはコメディだが、外連味が効いてるし、アクションはガチ。十八武芸の名前の通り、十八種類の武器術が堪能できる。

裸足のクンフー・ファイター(1993)

傑作。カンフー映画ではあるが、切ないドラマ面がかなり秀逸。田舎から出て来たカンフーは強いが学の無い貧しいピュアな青年の悲劇を描く。人間、ピュアなだけじゃ駄目で、分別()が無いと駄目だぞという、カンフー映画で偶に見かけるメッセージを、限りなく切ないドラマとして見せてくれるので、テーマ的にも観といた方が良い。

The Young Vagabond(1985)

個人的には面白いが、評価が分かれそうなタイプの作品。端的に言えば、義侠心に溢れた青年が、ひたすら悲惨な目に遭う話。最初は思いっきりコミカルな映画なのに、最後はバッドエンドな悲劇で着地するという謎な構成。カンフーなんて意味無いし、義侠心なんて意味ないぞ…という、カンフー映画としは謎なニヒリズムに溢れていて、かなり異色な印象がある。

少林拳対武当拳(1980

なかなか面白い。侵略者である清朝のケツを舐める武当派(悪役)と少林派の、血で血を洗う不毛な抗争を描く。見所としては、バイオレンスな特撮カンフー描写か。五毒拳とキャストが被っているので、俳優繋がりで観るのも良し。シナリオはそこまで凄いとも思わないが、不毛な復讐の連鎖というテーマ部分の描写には、なかなか見所がある。

カンニング・モンキー/天中拳(1978)

なかなか面白い。武侠モノだけど、コメディ要素は強めなジャッキー映画。カンフーが出来ない青年が、何やかんやで江湖のゴタゴタに巻き込まれて、強くなっていくよくある感じの話。ジャッキー映画好きで、武侠モノが好きなら観といて別に損は無いだろう。

成龍拳(1977)

傑作。ジャッキー・チェン主演だけど、内容はシリアスな武侠モノで、ドラマが秀逸。あらすじはプロットが複雑過ぎて説明し難い。

原作は古龍(台湾の有名な武侠小説家)の『剣・花・煙雨江南』で、脚本も古龍本人が担当している。所謂ジャッキー・チェン映画が好きな人には、作風が違い過ぎるので別にお勧めしないが、キレッキレのカンフー・アクション、シリアスでヘビーな武侠ドラマが最高なので、武侠モノが好きな人にはお勧めする。

蛇鶴八拳(1978)

なかなか面白い。ジャッキー・チェン主演だけど特にコメディ要素は無い本格武侠モノ。少林寺八流派の師範たちは、各流派の技を組み合わせて蛇鶴八拳という武術を作りだしたが、秘伝書と共に全員が失踪してしまう。数年後、『蛇鶴八拳』の秘伝書を持つ謎の青年が突如江湖に現れる。武侠小説を読むのは面倒くさいが、武侠モノのノリを見てみたいなという人向けには良い感じの入門編かもしれない。


by cemeteryprime | 2018-10-01 18:35 | 作品・感想 | Comments(0)

【映画感想】グレイテスト・ショーマン

アメリカの伝説的な興行師、P・T・バーナムの生涯をモチーフにしたミュージカル映画。


2月に公開されて速攻観たけど、感想記事を書いていなかったので、過去のツイートを掘り返して、思い出しながら書いてみる。

結論

テーマ性も最高!音楽も最高!

実はこの映画、公開前から期待値が高すぎて、逆に不安だったのだが、不安を見事に吹き飛ばす内容だった。

というのも、主人公のモチーフ(敢えてモチーフと表現する)であるPT・バーナムって、アメリカのエンタメ界(興行界)のレジェンドだからだ。エンタメ界のレジェンドの話を、エンタメ映画にする訳だから、そりゃあ生半可は許されない訳だ。でも、これがアメリカのエンタメ精神じゃい!って堂々と胸を張れる内容になっていたので、凄く良かったよね。

あらすじ/概要

保険会社で働くしがないサラリーマンのバーナムは、本当はもっとデカい企画とかしたいのにと思いつつも、つまらないデスクワークに終われる日々だったが、どえらい海難事故で会社が破綻。ついに、俺の夢に向かって走り出すことを決意する。

初めは博物館(ヴンダーカンマー)、そして際どいフリークスショー(サーカス)を始めたバーナム。面白さこそ正義だと!アカデミズムの酷評などなんのそので、有名興行主になって、長年の夢だった地位と金を手に入れる。そして、バーナムの名声はイギリス女王陛下への謁見でピークに達する。

しかし、バーナムはそこで出会った有名歌手に一目ぼれし、大衆向けエンタメであるサーカスや家族をそっちのけに、上流階級向けのエンタメに浮気をしてしまう…。

面白さ

この映画の一番の面白さというか、肝の部分というのは、エンタメ最強説みたいな哲学の部分だろう。

エンタメはパワーであり、面白ければ世間に評価されるし、ド底辺からでものし上がれる。このエンタメ哲学は、アメリカにおいては今でも確かな存在感を持っていて、だからこそスター発掘番組みたいなのも盛んだし、歌や映画でアメリカン・ドリームを掴むみたいな夢がそれなりにリアルなのだ。

バーナムは、それ故にエンタメのパワーで、最下層からのし上がっていく。だからこそ、そんなバーナムの前に立ちふさがるのは、エンタメを理解しない人では無く、別の素晴らしいエンタメだったりする。バーナムは、エンタメの力で、サーカスの仲間たちという疑似家族(そこには後継者であり疑似息子であるザック・エフロンも含まれる)も手に入れる訳だが、別のエンタメに浮気してしまう事で、本当の家族も、サーカスの疑似家族も、同時に裏切る事になるのである。

エンタメ大好きおじさんだからこその、道の踏み外し方な訳だが、当然そうした今まで信じて来たものを裏切る道に未来は無く、失敗してしまう。そこで、何だかんだで元の鞘に戻れる辺りは、ファンタジーな訳だけども、そこはハッピーなミュージカル映画なので、多少はね。

多様性

また、エンタメの哲学はフリークスの扱いにおいても同じで、どんなに綺麗ごとを言おうが、フリークスって人と違うし、変わっている。でも、変わっているからこそ、面白い。だったら、その面白さを前面に押し出して武器にしてやろうという発想になっている。エンタメ至上主義は、多様性の尊重とも無理なく共存できる哲学なのである。

バーナムは、ハッキリ言って別にフリークスの人権に関心がある訳じゃない。ただ、フリークスが面白いし、戦力になるという事だけは確信している。だからこそ、一緒にエンタメを作る仲間になってくれ!と勧誘する訳である。

フリークス達にとっても、例え見世物的な扱いであろうが、社会に存在感を示せるなら、社会の闇、恥部として世間から隠されているよりは、100倍マシみたいな考え方になっている(様に見える)。自分らしさを堂々と活かしてスターになれるなんてチャンスは、そうそう無い訳で、フリークス達にとっても悪くない話なのだ(少なくとも出演している奴らにとっては)

ここには、多様性のある種の理想形がある。外野からの無責任な消費でも、擁護でもなく、違っているという部分に確かな面白さ=価値を見出され、立派な戦力として、仲間として共闘するという姿である。

これを『多様性の尊重』という今時のリベラルなお題目に対する、単なる目配せと考えるのは、むしろ浅はかな考えだというべきだろう。人間の多様性から来る面白さが、エンタメ至上主義と、見事に合流した姿として、敢えて今こそPT・バーナムという題材を描いている訳なのだから。

音楽

色々と述べたが、この映画で一番最高なのは、何といっても音楽である。特に幻想的な画作りと歌によって、紡ぎだされる世界は素晴らしいの一言。これに関しては、観て聴いてとしか言いようが無いが。

ちなみに、この映画はアカデミー主題歌賞は取れなかった訳なのだが(取ったのはリメンバーミー)、それはリメンバーミーが、そもそもリメンバーミーという曲を巡る話であった上に、主題歌を色んな場面で手を変え品を変え、使いまくって強調するタイプの映画だったからだと、個人的には思っている。

一方、この映画は主題歌一本で勝負するタイプではなく、あくまでミュージカルであり、色んな素晴らしい楽曲が登場する。なので、曲だけで言えば、余裕でグレイテストショーマンが買ってるよ!と言いたい。アカデミー・サントラ賞とか作ってもらえてたなら、間違いなく受賞していたはずである。

ちなみに、音楽を担当しているのは、ラ・ラ・ランドと同じチームだ。『ラ・ラ・ランド』はストーリーこそオタクのルサンチマンを美化した感じの内容で、音楽映画としてはクソなんだけど(音楽の素晴らしさより、オタクのエゴがまるで美しいモノが如く前面に出ているので)、音楽自体は素晴らしいって変な映画である。

構成

ついでに構成についても触れておこう。まずは宣伝で使われまくっている、クライマックスっぽいド迫力のサーカスシーンを、冒頭に持って来て観客に一発かまして来る所が最高だ。

ストーリーは、バーナムの少年時代から始まるのだが(キャラクターを理解させる為に必要なので)、ただその辺はそこまで面白い訳でもないので、冒頭で一発かましておいて、後はテンポよくという構成になっていて、なかなか上手い。

そして二幕の前半くらいのサーカス結成の所で、再びグッと盛り上がる。俺はここで泣いた!そこからバーナムの盛衰が描かれるけれど、同時に弟子のザック・エフロンの成長と師弟のバトンタッチも描かれるので、伝記映画にありがちな、最後は落ち目になって終わるみたいな切ない感じにはならず、、ラストはハッピーエンドでほっこり閉める。

普段はこういう構成的な部分をごちゃごちゃ評価しないけれど、アメリカ映画の三幕構成だとか、そういう観せかたの哲学(観客を飽きさせない技)って、実は巡業サーカスだとか、ショー(興行)から来ているらしいんだよね。この映画は、グレイテストショーマンなので、そういう部分も期待値を超えていて欲しいなと思った訳だが、超えていた気はする(うろ覚え)。なので、気が向いたら、その辺りも意識して観るのも良いかもしれない。

ざっと、思い出せる範囲で書いたが、兎に角まぁ、面白い映画だよ!(雑な要約)

あと、結構映画館で映えるタイプの映画でもある。


by cemeteryprime | 2018-06-24 16:16 | 作品・感想 | Comments(0)

【映画感想】ワンダー 君は太陽

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結論

予想外に面白かった!かなりの良作!

心に深く刺さる最高傑作とまでは、正直思わなかったが、これに関しては俺がこういうテーマの作品を割と観ているからで、そうじゃない人にとっては、十分に最高傑作になりうる映画では無かろうかとも思える。

あらすじ/概要

オギーは、重度の障害を持って生まれて来た子供で、主に顔面がグチャグチャで、整形手術を繰り返しているが、明らかに奇形って感じの面相をしている。

それ故に、永らくホームスクールをしていたのだが、いつまでもこれではいかんと、母親がオギーを小学校に入学させる事を決意する。そこから始まる、家族と学校の変化の話である。

面白さ

こういう言い方をすると身も蓋も無いが、障害者の子供を主人公にした、お涙頂戴モノのハートフルストーリーだと思っていた。観る前は。じゃあなんで観に行ったんだと言うと、特に他に面白そうな映画が無かったからである。

でも、実際はオギーも含めた子供たちの成長を描く群像劇だった。オギーが障害に負けずに努力した、頑張ったというよりは、オギーが学校に通い出した事で、周りの子供たちが(オギ―も含めて)変化し成長したという部分に、素晴らしさを見出す話になっているのだ。勿論、その過程は綺麗ごとだけではなく、糞みたいな話もいっぱいあるのだが。

でも、子供たちは機会さえ与えられてば、学べる。そういう部分を肯定的に描いている部分が素晴らしいと感じだ。

鈴木先生イズム

観ていて、ちょっと似てるなと思ったのは『鈴木先生』という作品だ。漫画はちゃんと全部読んだこと無くて、ドラマの方しか観てないけども。

この映画で、最初に「おっ!?なんか違うぞ?」と思ったのは、オギーの姉を主人公としてパートが始まった所だ。オギーは障害を持った子供なので、当然手がかかる。姉にとってオギーは可愛いのだが、オギーが生まれてからは、普通の家庭以上にオギーは家庭の中心になり、両親の愛情も独占する事になる。

必然的に姉は、小さい頃から手のかからない良い子にならざるを得なくなってしまったのである。サブタイトルになっている『君は太陽(サン)』というフレーズは、サン=息子=太陽のダブルミーニングで、要は家がオギーを中心にした太陽系みたいになっている点を示唆する言葉である。

こうした、問題児ばかりが構ってもらえて、良い子は放置されてしまう的な孤独や問題意識が描かれる点が、鈴木先生っぽいな~と思った所だ。まぁ、それ以外にも学校を中心に子供たちの人間関係や成長が描かれている点もそうなんだけども。

好きな演出

個人的に、想像力豊かな少年の空想交じりの現実みたいな表現が好きだ。最近だと、ボスベイビーなんかも、そういうマジックリアリズム表現が面白い作品だったのだが、この作品もオギーは想像力で巧みに辛い現実を改変しようとしていて、その辺りが個人的にツボである。

あと、少年たちの成長を描く上で、あると最高なのが、年上のいじめっ子たちに子供たちが力を合わせて反撃して、一緒に逃げて仲良くなる演出だ。活かした少年たちの成長物語にはこういうシーンが出て来るもんで、具体的にはスティーブン・キングの『IT』なんかの同様の場面が凄く好きだ。この映画でも、そういう場面がちゃんと押さえられていて、分かってるじゃん!って感じだ。

キャラクターの良さ

あと、個人的に良かったと思うのが、オーウェン・ウィルソン。この人は、軟派で流され安いけど、芯があるというか根は良い人みたいな役が似合うんだけど、この映画でオギーの父親役として、その辺りのキャラが死ぬ程上手く嵌っていて良かった。優しくて気配りもできて、強く主張はしないんだけど、実はこっそり、やることやっているみたいな感じで、こういう格好良い親父は良いよなーって思う。

あと、子供たちを導く先生たちも距離感が良いんだよね。説教臭くなくて、子供たちの自主性を尊重するという部分が、無責任な感じに思えない塩梅で、見守っている感が凄いというか。

あと、この手の映画(子供たちの成長物語)で一番重要なポイントは、子供たちのキャラクターだと思うのだが、みんな可愛らしいし(キャラが)、それでいて癖もあって、憎たらしいイイジメっ子とかも子供らしい所がちゃんとあって、凄く良かった。

まぁ、面白い映画なので、時間があれば是非観て損は無いはずである。子供たちにこそ見せたい系の映画だと思う。そういうのは、良い映画に違いない。


by cemeteryprime | 2018-06-24 12:01 | 作品・感想 | Comments(0)

【映画感想】ゴーストバスターズ(2016)

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ネトフリに追加されてたので、今更観た。

結論

正直、微妙…。

今作は公開前からアンチフェミ勢とリメイクではなく続編を望んでいた原作厨に叩かれまくっていた訳だが、結論から言えば一周してそれが割と的を得た批判になってしまっている点が、なんだかな~と思える。フェミの良い所じゃなくて悪い所が出ているし、原作の良い所を理解してない感じの薄っぺらいリメイク感で溢れていたのだ。

あらすじ

主人公のエリンは超自然現象を信じる物理学者。本物の幽霊と出くわすも、色々あって友達の科学者ともども大学を追われて無職になり、自分たちで幽霊退治の会社を起業する事になる。

…みたいな感じで、主人公たちが中年親父から中年おばさんになっているものの、大雑把には旧作のストーリーと同じ。作風の違いはおいといて、大きく違うのは人間の悪役がいる点だろうか。

主人公たちの暗黒面みたいなキモいオタク(男性)が、科学の力を使ってニューヨークに霊的なテロを仕掛けようとする。世間はそんな男の存在どころか、ゴーストも信じてくれない。どうするゴーストバスターズ!みたいな話。

面白く無さ

まず違和感を覚えるのが、全体的にファッショナブルというか、色彩もノリも明るくてポップになっている点だろう。旧作にも明るくポップな要素はあったが、同時にギークでクリーピーな要素もあったので、ある種の厚みが出ていたのだが、今作は後者が消えてしまっているので、単に軽薄でペラペラな印象が強い。

また旧作は、確かに主人公は中年オッサンなのだが、ストーリー的には子供心に溢れた、良くも悪くも男の子の世界である点が良かったのだ。しかし、今作は主人公を中年女性にしたからなのか、中年女性(もしくはイケてない女性)向けの世界になってしまっている。そりゃ、そういう女性層には刺さるだろうけど、対象が狭すぎないかそれ?という。しかも、ゴーストバスターズでやる意味ある?みたいな。

確かにこれでは、観た上でもバッシングを受けるのも致し方なしという気はする。クリへムを頭は空っぽで身体だけ良い金髪マッチョマンとして描くみたいなギャグも、頭が空っぽの金髪巨乳のセクシー美女に秘書をやらせて馬鹿さ加減をギャグにするのと本質的には大差ない訳で、フェミ的には皮肉が効いたギャクなのかもしれないが、差別を受けた側は差別をやり返しても良いのだ的な発想のギャグなので、やっぱりどこか狭いというか内向きな感じが否めない。

ガジェットも色々新しいのが出て来たけど、扱いにギーク的なフェティシズムが感じられなくて、悉く勿体ないなという感じ。

面白さ

1番興味深いなと思ったのは、ストーリーの構造的な変化である。ゴーストバスターズは、基本的に駄目なオタクが世界を救ってヒーローになるみたいな話だった。故に、主人公たちはモンスターの専門家で、モンスターを退治することでヒーローになる訳だ。

でも、今回の新ゴーストバスターズが戦うのは、厳密にはモンスターというより、自分たちのダークサイド的な人間である。一見これは良いオタクvs悪いオタクの構造になっている。

良いオタクvs悪いオタクの構造は、パシフィックリム:アップライジングでも見られた。でもあれは、良いオタクvs悪いオタクの部分はストーリーのメインでは無かった。あくまでメインは人間vsモンスターの部分で、脇役的にモンスターの専門家(オタク)同士の善と悪の対立があった形になっている。だからこそ、筋の通ったストーリーとして成立している訳だが、新ゴーストバスターズはどうか。

結論から言えばそういう構造にはなっていない。悪いオタクがモンスターも兼ねるという構造になっている。要は、良いオタクが悪いオタクを倒してヒーローになるという構造になっている。限りなく狭いのだ。

さらに付け加えるなら、主人公たちは良いオタクですらない。単なるイケてない中年女性たちなのだ。一方で、悪いオタクの方はきっちり悪いオタクとして描かれている。彼は科学の力でゴーストを解放し、ゲートを解放し、自らも人間を辞めて怪獣になろうとする。これは間違いなく悪いオタクだ。

一方の主人公は、成り行きでゴーストバスターズをやる羽目になる感じで、そもそもゴースト研究自体が過去の汚点だった様に描かれている。ゴースト趣味は、決別しなければ、職を得られないみたいな描き方である。その後の、ゴーストバスターズとしての活動が、基本的には白い目で見られ続ける描写も踏まえると、彼女たちにとってのゴーストバスターズ活動は単に自分らしさを隠さない程度の意味合いなのだと理解出来る。

それを踏まえると、新ゴーストバスターズは結局の所は、単にフェミがキモいオタクをボコって居場所を見つけて満足する物語になる。マイノリティが別のマイノリティを叩くだけの構図だ。それ故に、彼女たちは別に社会のヒーローにもならない訳なのだが、そんな話が面白いか?確かにシニカルで現実をそのまま反映したかのような物語ではあるが、そんなもんTwitterでしょっちゅう見かける構図だから、わざわざ映画で見せて貰わなくても…とは思う。

パシリム2の場合は本当に善のオタクvs悪のオタクだったからこそ、お互いに通じ合う部分もあるし、かつては友だったのにみたいなドラマ的な面白さも伴う訳だが、フェミがキモオタクを叩く話にドラマも糞も無いんだよ。


by cemeteryprime | 2018-05-26 11:00 | 作品・感想 | Comments(0)

【映画感想】ランペイジ

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結論

面白かった!

怪獣映画としても面白かったし、規格外の英雄と怪物がバトルする神話に出て来る様な物語でもあった。

あらすじ/概要

悪徳企業が宇宙ステーションでこっそり開発していた軍事用の怪獣作成ウイルスが事故により、地球に流出。ウイルスに感染した動物が怪獣に変貌して大暴れする。

…という感じで、あらすじは死ぬ程シンプル。主人公(ドウェイン・ジョンソン)は元傭兵でかつて密猟者の取り締まりを行う特殊部隊にいた男。その時に保護した白いゴリラの赤ちゃんジョージとの交流が切っ掛けで、今はアメリカで霊長類学者になっている。そんなジョージがウイルスに感染して怪獣化してしまい、主人公はジョージを助ける為に立ち上がるのである。

面白さ

この映画の面白さは、何といっても主演のドウェイン・ジョンソンの使い方だろう。ドウェイン・ジョンソンというハリウッド映画が時間をかけて生みだした、人というよりは怪獣に近いキャラクターの存在が、ついに怪獣の世界と人間の世界という通常は重なるはずの無い2つのレイヤーを完璧にクロスさせる事に成功したのだ。これは怪獣映画において1つの発明とも言える。

エイリアンみたいなサイズが人に近いモンスター映画ならともかく、街を破壊する様な巨大な怪獣は通常は、災害だとかのメタファーみたいなものなので、人類や軍隊の総力戦みたいな形式でなんとか立ち向かえる相手である。それ故に気まぐれな神の様にも描かれる。基本的に人が個人でどうこう出来る相手では無いし、怪獣同士の戦いは基本的には見守るしかないのである。が、ドウェイン・ジョンソンならそれが出来てしまうのである。

この映画は、3匹の魅力的な怪獣が出て来る映画なのだが、それ以上に実はドウェイン・ジョンソンが小型の怪獣である点がポイントになっている(これは、もちろん比喩表現であり、作中で人外な訳では無い)

映画を見れば分かるが、この作品は主人公がドウェイン・ジョンソンでなければ成立しない展開が山ほど出て来る。別の人間がやっていれば、途中で100回くらいは死んでいて然るべきなのだが、ドウェイン・ジョンソンならまぁ大丈夫かも…と思わせてくれる部分に最大のマジックがあり、それ故に面白い作品になっている。

ドウェイン・ジョンソン以外では成立しない荒唐無稽なストーリー展開、怪獣と人間(個人)のガチバトルが観たいなら、ランペイジを観るしかない!

現代のヘラクレス

人ではあるが、人を超えたイデアが宿った存在…要はある種の半神半人であり、彼らは物語の中で巨大怪獣と戦っていても何の違和感も発生しない。つまり、ヘラクレス的な存在である。

ハリウッドの映画界で、巨大な怪獣とタイマンで戦える説得力を持ったヘラクレス的なキャラクターを宿した俳優が何人存在するだろうか?個人的にはアーノルド・シュワルツェネッガーこそ、映画においてヘラクレス的なキャラクターを蘇らせた第一人者では無いかと思える。

そして、ドウェイン・ジョンソンはシュワルツェネッガーが切り開いた現代のヘラクレス路線を、正しく継承する俳優であり、現代のヘラクレス2.0というべき存在なのだ。なぜ2.0なのかと言えば、ドウェイン・ジョンソンの場合は単に神話級の筋肉超人というだけではなく、頭も良いという要素がプラスされているからだ。シュワルツェネッガーの場合は、こういうと失礼だが、あまり頭が良いみたいなキャラ要素は無かった。

ドウェイン・ジョンソンはランペイジにおいても、戦士であると同時に学者でもあるというキャラになっている。ジュマンジ:ウェルカム・トゥ・ジャングルでもマッチョな学者であった。もちろん、単なる脳筋の役もやっているが、顔の作りが若干神経質そうなというか真面目そうな雰囲気があるからなのか、単なる脳筋の役はいまいち似合わない。

戦士の肉体と学者の頭脳を兼ね備えたキャラクターの元祖としては、ドック・サヴェッジという存在がいる。193040年代のパルプ小説の主人公でスーパーマンの原型にもなったキャラである。

ちなみにドウェイン・ジョンソンはドック・サヴェッジの映画化企画で主演をするという話が出ている。また、ドウェイン・ジョンソンは過去にヘラクレス役もやっている。その映画におけるヘラクレスは、イデアとして“ヘラクレス“という伝説を上手く利用して立ち回るクレバーな傭兵として描かれていた。

ドウェイン・ジョンソンは名実ともに現代のヘラクレス2.0なのである。

ブラザーフッドの精神

また、あまり誰も注目していない要素ではあるが、ランペイジも最近のハリウッド映画の主流であるブラザーフッド精神の重要性を説く作品になっている。

実はランペイジは、理念の高さ故にアウトサイダー化していた孤独な奴らが手を組んで、既存社会が生み出した問題を、既存社会が想像しなかった方法で解決するという話になっている。なので、ついドウェイン・ジョンソンと巨大ゴリラに視点が集中しがちだが、それ以外の仲間にも注目して欲しい。

ジェフリー・ディーン・モーガン

特に注目して欲しいのがジェフリー・ディーン・モーガンだ。ドウェイン・ジョンソンは、良くも悪くも国籍不明感というか、多国籍感があるキャラクターなので、アメリカ人代表としてドウェイン・ジョンソンに協力するキャラが必要になり、それをモーガンが演じている。

この役はジェフリー・ディーン・モーガンじゃないと出来なかったはずだ。何故なら、ドウェイン・ジョンソンの横に並べても、フェロモン的な魅力で引けを取らない俳優(濃い漢という意味で)は、彼くらいしかいないと思うからだ。

ジェフリー・ディーン・モーガンは、危険でセクシーな中年オヤジみたいな役をやっているイメージがあるが、個人的に好きなのは『ウォッチメン』におけるコメディアン役であり、バットマンvsスーパーマンにおける、ブルース・ウェインの親父役(トーマス・ウェイン)も記憶に新しい。

ミスター・ノーバディ

また、彼が今作で演じるハーベイ・ラッセルのキャラも素晴らしい。政府の人間であり、非合法的な活動を指揮する立場にありながら、一匹オオカミ的で情に篤いカウボーイというキャラクターである。思うにハーベイ・ラッセルこそ、ワイルドスピードシリーズに登場したミスター・ノーバディ(演:カート・ラッセル)が本当に表現したかったイデアを体現するキャラなのではと思える。

確かにカート・ラッセルは昔なら上手く表現できていただろうが、歳を取り過ぎて表現(というかフェロモン)が弱くなってしまっている。『ワイルドスピード・アイスブレイク』では代替わり要員として、まだちょっとその域には達していないスコット・イーストウッドがリトル・ノーバディ役として登場していたが、ジェフリー・ディーン・モーガンであれば、ドンピシャでミスター・ノーバディを演じることが出来たんだろうなとこの映画を見ると思える。

怪獣と戦えそうで戦えない俳優

ドウェイン・ジョンソンこそ怪獣とガチンコバトルできる俳優であるという話をしたが、戦えそうで戦えない俳優はいた。サミュエル・L・ジャクソンである。彼も怪獣的な存在感を持つキャラクターであり、それ故に『キングコング/髑髏島の巨神』において、キングコングと対決させられた。まぁ、怪獣を倒せるレベルの怪獣パワーは無かったので倒されちゃう訳だが。サミュエル・L・ジャクソンは、アベンジャーズシリーズやトリプルXなんかでも、怪獣一歩手前な存在感を活かしたキャラを演じているが、どちらの作品でもキャラが強すぎるが故に若干使いあぐねている感は否めない。かといって、怪獣とガチンコバトルをするほどでも無い。使いどころが難しい俳優である。

ゴリラ映画としてのランペイジ

どうでもいいけど、ランペイジはゴリラ映画としても秀逸である。これに関しては観れば分かるとしか言えないが、ゴリラだから出来る表現みたいな要素を大いに活用しているのが楽しい映画でもある。これは、地味にキングコングでもやっていなかった点では無かろうか。

ゴリラだから人がやったらアウトな事を堂々と出来るし、怪獣だからやっても許されることをやれちゃうのである。そういう意味でも巨大白ゴリラのジョージはなかなか美味しいキャラだと思う。キングコングと違って、最新シリーズの猿の惑星に出て来た猿みたいに手話が出来るのだ。なので、色々と美味しいとこどりが出来て偉い!


by cemeteryprime | 2018-05-25 10:24 | 作品・感想 | Comments(0)

【映画感想】レディ・プレイヤー1

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結論

映像的には面白いが、ストーリーは微妙。

端的に表現するなら、スピルバーグ版のソード・アート・オンラインという感じ。ただし、古いオタク文化の入り口としてのソード・アート・オンラインである。

あらすじ/概要

舞台は2045年。現実社会は完全に荒廃し、人々は一人のスーパーオタク技術者ジェームズ・ハリデーが作ったバーチャルゲーム世界オアシスに入り浸っていた。

ハリデーは死ぬ間際に、オアシスのどこかに隠したイースターエッグを見つけたものに、オアシスを含めた彼の遺産の全てを継承させると宣言(ワンピースのゴールド・ロジャーみたいだ)。かくして、それまで以上に人々は人生をかけてオアシスに潜ってイースターエッグを探すようになり、大海賊時代ならぬ大オアシス時代が到来したのであった。

そして主人公は家に居場所が無いゲームオタクの少年。彼は金目当てでは無く、純粋なゲームオタクとして、組織には属さずにハリデーが残したイースターエッグ探しというゲームに夢中になっていた。そんな彼がある日、ゲーム内で同じく組織には属さないタイプの謎めいた少女キャラと出会って…。

面白さ

舞台となるオアシスは、80年代に青春時代を送ったオタクという設定のハリデーが作ったバーチャル世界という設定なので、色んな映画や特撮やアニメやゲームのオタク文化が登場する。

日本のオタク文化からの登場キャラクターも多く、クライマックスで展開されるガンダムとメカゴジラの戦いなんかは、スピルバーグが映像化してくれたという点も含めて旧世代オタクにとっては失禁級のサービスシーンだろう。

ただ、最初の述べた様にストーリー的には、ほぼほぼソード・アート・オンラインという感じ。ゲームオタクが、ゲームを通じて世界の王になり、可愛い彼女もゲット!みたいな割と糞みたいな…というと語弊があるが、少年の心を持ったオタクの現実逃避に最適化された感じのユートピア物語であるのは間違いない。対象年齢は高校生くらいじゃなかろうか。

スピルバーグと旧世代オタク

この作品は、少年時代にオタク文化に救われたスピルバーグの、オタク文化へのある種の恩返しかもしれない。映画を観ればスピルバーグがハリデーに自分を投影しているのは間違い無いし、古のオタク文化を新しい世代のオタクに届けたいという思いを感じずにはいられない。

根底にあるのはオタクの世界においても分断が発生している現状に対する危機感の様なモノだろう。中高年オタクはこの映画を無邪気に喜んでいるが、果たして、メカゴジラやデロリアンや金田のバイクで喜ぶ若者はどれだけいるのだろうか。ストーリーは今時の若者に受けそうなSAOみたいな感じにして、この作品を入り口に、古いオタク文化に興味を持って欲しいという意図を感じる。

それを踏まえると、この作品に描かれている、最大のフィクションは、1つに統合されたオタク世界としてのオアシスの在り方では無かろうか。統合されたオタク世界というものは、実際の所は、非オタク的な人々の脳内にしかない幻想でしかない様な気もする。最近のオタクは、予備知識ゼロで楽しめるものを求めるし、予習が必要なタイプの作品は敬遠されやすい。オアシスの中で発生した様な、みんなが1つのオタク世界を共有し、夢中になって古い作品についての知識を求める世界なんて現実には存在しないのだ。今作は、そんな現実に対するスピルバーグからの切ないカウンターだとも言えるだろう。

脳内当てゲーム

もう1つ興味深いなと思ったのが、この映画におけるメインゲームの内容が、事実上のハリデーの脳内当てゲームになっていたという点である。

ストーリー構造的には、ゲーム世界の神(ハリデー)=主人公=原作者の自己投影みたいな感じなので、下らねーなとしか思わないし、主人公がハリデーの脳内を当てることで無双出来るという部分のオナニー感が酷すぎない?とも思うのだが、それはひとまず置いておこう。

何で興味深いと思うのかというと、日本のクトゥルフ神話TRPGという遊びにおいて発生しているガラパゴス的な特徴との類似性が高いからだ。

端的に言えば、プレイヤーが共通の世界観もクソも無く、各自の世界観をキャラクターとして持ち込み、みんなでゲームマスターの脳内当てゲームをして遊ぶという要素である。

はっきり言って、この脳内当てゲームという要素はそれが意図せず蔓延しがちな日本のTRPGシーンにおいても、批判的に語られる事の方が多い。実際の所は、パズルだったりクイズだったりの謎解きゲームなのだが、ディスコミュニケーション要素とゲームデザインの下手糞さから、実質的に作者の脳内当てゲームになっていると揶揄されている代物だからだ。

ハリデーの様に莫大な遺産が手に入るなら、作者の脳内当てゲームでもやる気は出るが、TRPGの場合は単なるハズレ感しかないので、批判されるのも仕方が無いだろう。それは兎も角、この共通点から視えて来るのは、自己表現や理解してもらいたいという欲望では無いのかと思える。

賞金は無くても、ゲームという形で、作者の脳内を当ててもらうという事は、ある意味で、忖度してもらえるチャンスでもある。自分できちんと説明することなく、相手に興味を持って貰い、意図を汲み取って貰うチャンスなのである。ディスコミュニケーションへの欲望(自分で説明はしなくても相手に汲み取って貰える)を満たす事が出来るのである。

また、プレイヤーが共通の世界観を無視して、思い思いのキャラクターを持ち込み、それになり切るという行為も、自己表現という文脈で理解できる。オンライン上で行われるTRPGのセッション動画なんかを見ていると、好きな漫画やアニメのキャラクターを持ち込んで、なり切っているプレイヤーは少ないない。図らずもこの作品のゲーム内で行われている光景が広がっているのである。なんなら、ガンダムやスーパーロボットを持ち込んでいる光景も見た事はある(メカゴジラは見た事ないが)

そういう意味では、なかなか現代の空気感を上手く切り取っている作品である気もする。ただ、個人的には、ライダー大戦みたいな取りあえずキャラクターがカタログ的にいっぱいでて来るだけで、ストーリーがいまいち面白く無いタイプの作品は嫌いなので、微妙だなと思った。話はジュマンジ:ウェルカム・トゥ・ジャングルの方が圧倒的に面白いよ。


by cemeteryprime | 2018-04-22 15:40 | 作品・感想 | Comments(0)

【映画感想】アナイアレイション/絶滅領域

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結論

正直、いまいち。

映像表現的な面白さに特化し過ぎているというか、雰囲気重視な作品。メッセージ性やドラマやアクションで魅せるタイプの作品ではないので、個人的にあまり趣味じゃない。

あらすじ/概要

任務から帰って来た彼氏(軍人)の様子がおかしく、突然、血を吐いて倒れてしまう。そして、救急車で運ばれる彼氏に付き添っていると、怪しげな集団に捕まり、政府の謎の研究施設へと送られる。

どうも彼氏は、シマーと呼ばれる地球上に突如出現した謎の領域へ探査に向かった後に、失踪していたらしかった。シマーで何があったのか?いまいち事情も分からぬままに、主人公は集められた数名のメンバーと共にシマーへの探査チームに参加することになる。

面白さ

この作品を理解する為のポイントは、シマーが何を表現しているかという部分にある。

結論から言えば、シマーとはモノ(概念、ミーム、情報)の世界である。それ故に、シマーの内部では、時間の感覚も無く、不死性が存在し、色んなものが混ざったり、シャッフルされたりする。突然、肉体の一部が別のものに置き換わるのも、モノの世界だからだ。

これが理解できると、この作品は、単に人の世界がモノの世界に侵食され、最終的には人がモノに完全に代替されてしまうという状況を、隠喩的に描いている作品であると分かる。それ故に、それが理解できてしまうと、大したドラマもアクションも無いので、作品の面白さが映像的な比喩表現や批評性にしか残らない気もする。そうした表現部分を純粋に楽しめる人にとっては、特に問題無い気もするが。

シマーがミームの世界だという点は、例えば主人公が遺伝子学者である点からも理解できる。生物の遺伝子であるジーンと、モノの遺伝子であるミームは対極的な存在であり、生き物であるからこそな有限性とモノだからこその不死性という対比も何度も出て来る。

また、主人公の浮気については、ある種の人の代替性を示唆する表現だと理解出来る。人の抜けた穴や寂しさは、別の人で埋めることが出来るし、最終的には別のモノでも埋める事が出来るのである。

主人公以外のシマー探索に選ばれ人たちにも、モノの世界やモノへの代替に惹かれる傾向が、特徴として描かれている。自傷癖なんかの自己破壊衝動は、パシフィックリム・アップライジングでモノに憑りつかれたニュートの特徴として描かれていたが、自分を別のモノに変化させたいという衝動だと理解できる。不治の病を抱えている人も、言うまでも無い。

現実世界において、技術の進歩で、人の色んな能力や属性は切り取られ、代替できるようになっている。更に最近では指紋や顔や声が、機械的な個人の認証方法として使用可能になったのと平行して、簡単にそうしたものを機械的に偽造したり盗んだりできるという問題も出現している。こうした状況は、シマー内でも再現されている。

ラヴクラフト要素について

実はこの作品は、ラヴクラフト作品…『狂気の山脈にて』に影響を受けているらしい。

実はこの世は地獄の様な場所だったを、マジックリアリズム的に表現するという意味では、確かに似たような所はあるかもだが、微妙にニュアンスが違うなという気もしている。というのも、ラヴクラフトの世界観においては、世界は人が知らなかっただけで、太古の昔から本質的に恐ろしい場所なのであって、それはシマーの様なある日宇宙から飛来した要素では無いからだ。

同じくラヴクラフトの影響を受けた作品としては、エイリアンシリーズの方がそうしたニュアンスを上手く掴んでいる。エイリアンや続編のプロメテウスにおいては、生き物の気持ち悪さや、人間はそもそも得体の知れない存在から生まれたという要素がきちんと描かれている。ラヴクラフトの『狂気の山脈にて』も、実は恐ろしい邪悪な先住種族の、醜悪な奴隷種族が、人間を含めた地球上の生命の起源かもしれないという事が示されるのがヤバいのであって、別にヤバいエイリアン的な種族とのコンタクト自体が恐ろしいのではないのである。

今作は言ってみれば、ショゴスや古のものについて何の説明も予想も提示されない『狂気の山脈にて』という感じである。特に何の情報提示もされないまま終わるクトルゥフ神話TRPGのセッションにも似ている。

もし、本当にそうした作品をリスペクトする気があるなら、シマーは外から来たのではなく、もとから地球にあった要素として描くべきだし、人類とモノの関係性を踏まえると、人類の起源にもシマーは関係していたみたいな描き方をすべきでは無かったのだろうかと思う。それこそ、2001年宇宙の旅における、モノリスみたいな感じで。

過去作との関係性

ちなみに監督はこの作品が何についての話なのかは明確なので、これ以上分かり易くする必要は無いと、言っているらしい。まぁ、確かに分かり易いとは思う。

この監督の他の作品は見た事ないのだが、人がモノに代替されるというテーマだったり、人とモノの対決がテーマだったりするらしいので、そうした作品の延長線上にこの作品が登場するのは、自然な流れだとは思う。

個人的には、同じテーマを扱いながら(ジャンルは違うが)、遥かに面白いパシフィックリム・アップライジングの方をお勧めしたい。


by cemeteryprime | 2018-04-19 10:51 | 作品・感想 | Comments(0)

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